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STORY 11 | 地域とヒト

周遊バスとホテルと“地参地商”で糸島観光の
第2ステージを目指すストーリー

観光客の滞在時間を伸ばして消費を活性化する企画をスタート!

今から2000年以上も昔から、大陸との交流拠点として栄えたと言われる、 福岡県糸島市。現在の市名にもつながる「伊都国(いとこく)」の名が魏志倭人伝にも記されるほど、深い歴史を持つ土地です。そして 現代では、海と山に囲まれた人気観光地として知られ、自然景観や四季折々のグルメ、おしゃれなお店目当てに、一年中多くの観光客が県内外から訪れています。

01_(左上より時計回りに)玄界灘の夕景が美しい人気景勝地の「二見ヶ浦」。落差 24mの名瀑「白糸の滝」。 岐志漁港 の 牡蠣小屋、 海沿いのカフェドリンク
(左上より時計回りに)玄界灘の夕景が美しい人気景勝地の「二見ヶ浦」。
落差24mの名瀑「白糸の滝」。 岐志漁港の牡蠣小屋、海沿いのカフェドリンク

そんな糸島市の観光協会で会長を務める田中信彦さんは、「コロナ前はインバウンドのお客様も増えて、『糸島』の知名度の広がりを実感していました。コロナ禍で全体的な来訪客数は減ったものの、最近は、密を避けて糸島の自然を満喫しに来られる方がまた増えてきています」と近年の動向について教えてくれました。

02_糸島市観光協会の田中会長は、江戸時代から続く老舗酒蔵「白糸酒造」の七代目
糸島市観光協会の田中会長は、江戸時代から続く老舗酒蔵「白糸酒造」の七代目

糸島市観光協会は2019年から観光地域づくり法人( DMO )の候補法人として活動を行なっており、 2022年中に観光地域づくり法人登録申請を行い、法人登録そして、さらなる糸島観光の活性化を目指しています。そんな期待高まる観光協会で田中会長と共にまちを盛り上げるべく、昨年事務局長の任に就いた高田秀峰さんが、糸島の観光地としての課題を話してくれました。
「来訪客の多くが日帰りドライブで訪れます。裏を返せば、車以外では観光しにくいということ。糸島市内までは福岡から地下鉄直結の電車が走っていますが、駅から各観光地へのアクセスが悪く、また、日帰りだとお金を使ってもらうにも限界があるので、なんとか宿泊観光を伸ばせないかと考えています」

03_前職の旅行会社での経験を活かして糸島を盛り上げたいと話す糸島市観光協会の高田事務局長
前職の旅行会社での経験を活かして糸島を盛り上げたいと話す糸島市観光協会の高田事務局長

そんな糸島の課題を解決しようと始まった企画が、糸島市の観光魅力アップ事業「オール糸島 地参地商」です。 産学官金(民間事業者、観光協会、九州大学 、糸島市、福岡銀行)が連携し、 地域アクセス改善と滞在時間伸長を目的に、二次交通や宿泊体験ツアーを準備して 2021年度中に実証を行うというもの。
「本格的なホテルや観光地を結ぶバスを使った今回の実証結果を踏まえながら、観光協会として次の打ち手を考えていきたい」と、田中会長も大きな期待を込めています。

04_2021年11月22日に糸島市長定例記者会見で「オール糸島 地参地商」事業を発表
2021年11月22日に糸島市長定例記者会見で「オール糸島 地参地商」事業を発表

糸島エリアに2021年8月にオープンした正統派シティホテル。

「オール糸島 地参地商 」には、2021年8月に九州大学の近くにオープンした「グローカルホテル糸島」が宿泊施設として参加しています。温浴施設や学生寮の運営を行うセトル株式会社が初めて手がけるホテルで、糸島を訪れる観光客が快適に過ごせる空間を目指し、細部までこだわって建てられました。

2021年11月1日に行われた開業記念式典の様子
グローカルホテル糸島の外観と客室一例。館内おしゃれなブックカフェ、朝食。

「九州大学伊都キャンパスの計画時から、糸島市や大学側の要望を聞きながら学生寮などをつくり、このホテルも、国内外から学会などで訪れる方々の滞在先というニーズを受けて企画しました。しかしコロナの影響で、想定外の幕開けとなっています」。そう話すのはセトルの代表取締役、一尾泰嗣社長。逆境でのスタートにもかかわらず、建てるからには利用者や社会のためになるものを、という思いから今回の事業にも参加。宿泊ツアーの造成や、糸島みやげのネット販売に積極的に関わり、“地参地商”を推進しています。

06_糸島の環境を守りながら賑わいづくりにも貢献したい、と話すセトル株式会社の一尾社長
糸島の環境を守りながら賑わいづくりにも貢献したい、と話すセトル株式会社の一尾社長

さらにこの事業の一環として、2022年1月には、県内外からモニターを募り、「ヘルスツーリズム」体験ツアーを実施。グローカルホテル糸島に泊まりながら、地元のおいしい食事や自然、ヨガなどを楽しみ、周遊バスで巡る糸島観光も組み込んだ2泊3日の宿泊プランです。ホテルの広報を担当している一尾早希子さんによると、「岩手や沖縄などから総勢20名の方が参加。みなさん糸島の豊かな食と自然、そして人の温かさに感動されていました。心拍数など身体的な変化も測定したので、癒し効果を実感してもらえたと思います」とのこと。

07-1_グローカルホテル糸島の広報マーケティングを担当している一尾早希子さん
グローカルホテル糸島の広報マーケティングを担当している一尾早希子さん
07-2_ヘルスツーリズム (一例:コンベンションルームにてヨガ体験)
ヘルスツーリズム (一例:コンベンションルームにてヨガ体験)

もう一つ、観光客はもちろん、まだ訪れていない人にも喜ばれている企画が「糸島まるごとオンラインマルシェ」です。これは、糸島が誇るいろんな産品をインターネット通販で買えるというサービス。FFGの地域共創型オンラインストア「エンニチ」にて期間限定で展開しています。
「糸島は、海産物に農産物、加工品からお酒まで、多種多様の特産品やお土産も魅力。生鮮品や持ち帰りにくいものなど、ホテルのお部屋や自宅で注文でき、自分用にじっくり選んだり遠方の家族宛に送ったりできる点も好評ですね。また、特典として次回糸島の店舗で使える“プリン引換券”も付いていて、これがきっかけで糸島旅を計画したという方もいました」(一尾さん)

08_1_ 約2カ月間限定でオープンした「糸島まるごとオンラインマルシェ」。秋から冬にかけて糸島半島西部で獲れる牡蠣など、旬の海産物セットも人気
約2カ月間限定でオープンした「糸島まるごとオンラインマルシェ」。
秋から冬にかけて糸島半島西部で獲れる牡蠣など、旬の海産物セットも人気
08_2_「 糸島まるごとオンラインマルシェ 」 にて野菜セット、鮮魚セット、ピザセットをご購入の方、先着 100 名様に糸島プリン無料引換券をプレゼント
「 糸島まるごとオンラインマルシェ 」 にて野菜セット、鮮魚セット、ピザセットをご購入の方、
先着100名様に糸島プリン無料引換券をプレゼント

二次交通として期待大!「 ITOSHIMA HOP ON BUS 」の試験運行

糸島市の観光魅力アップ事業「オール糸島地参地商」の要の一つが、地域アクセス面の課題解決です。そこで登場したのが、コンシェルジュ(乗務補助員)付きの周遊バス「 ITOSHIMA HOP ON BUS 」。地元で運送や観光バス事業を営む株式会社イトキューが小回りの利く小型バスを準備し、糸島の風景写真で外装を仕上げ、今年1月に運行を開始しました。

09_2022年1月14日〜2月14日の 1 カ月間モニター運行した「 ITOSHIMA HOP ON BUS 」。観光名所や人気店などを巡り、コースは 2 種類。料金は 1000円(モニター価格)。グローカルホテル糸島でも乗降できる 。
2022年1月14日〜2月14日の 1カ月間モニター運行した「 ITOSHIMA HOP ON BUS 」。観光名所や人気店などを巡り、コースは2種類。
料金は1000円(モニター価格)。グローカルホテル糸島でも乗降できる 。

「その昔糸島はみかんの一大産地で、当社の原点も収穫したみかんの輸送業です。その後、花農家が増えたため生花輸送へシフト。近年になり観光バス事業を始めました」と話すのは、イトキューの中原理臣社長。一度県外で就職した経験を持つ中原社長は、「離れてみて初めて、糸島の良さを実感。帰ってきて家業を継いでからは、このまちのために何かしたいと強く思うようになった」そう。今回の魅力アップ事業に参加を決めたのも、そんな地元への熱い思いからでした。

10_バス事業展開に伴い、自身も大型運転免許を取得したという株式会社イトキューの中原社長
バス事業展開に伴い、自身も大型運転免許を取得したという株式会社イトキューの中原社長

「今回は観光客向けに、人気のカフェや絶景スポット、観光名所などを巡る2コースを設定しましたが、高齢化に伴い地元の方の足としても、公共交通の重要性は増しています。今後も地元のバス事業者として、いろんな観点から地域に役立つ仕事をしていきたいですね」と中原社長。
観光協会の田中会長や高田事務局長、グローカルホテルの一尾社長も、そんな中原社長に大きな期待を寄せており、これからも共に地域活性の道を模索し、糸島のために協働して取り組んでいきたいという希望を述べていました。

10_バス事業展開に伴い、自身も大型運転免許を取得したという株式会社イトキューの中原社長
「オール糸島 地参地商」について取材に答えてくださった中原社長、一尾早希子さん、一尾社長、田中会長、高田事務局長(左から)

観光振興でも官と民をつなげて相乗効果を生み出したい。
福岡銀行 地域共創部の思い。

FFGの一員である福岡銀行は、地域金融機関として長年に亘って、地域に根ざした活動を行っており、地方創生の取組みとして、コロナ禍で打撃を受けた観光地域再生のサポートを行っています。
今回の糸島市の事例では、DMO組織として観光を活性化し事業化したい観光協会、長年にわたりその土地で生業を立ててきた地元の民間事業者が行政の施策のもとで連携し、地域アクセス改善と滞在時間伸長という課題解決に臨みました。 このような取り組みの中で、FFGならではのネットワークを活用したり、「エンニチ」のような ECサイトを利用したりすることで、多様な業種が連携して進める地方創生事業のスピードアップや効果の拡大を図っていきたいと考えています。
今後も、さまざまな自治体様や地域事業者様と一緒に、地域活性に取り組んでまいります。