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#熊本県熊本市/八代市 #TSMC #海外商談会

 

自治体が海外でセミナー開催!
台湾企業へ直プロモーションを成功させたストーリー。

目次

ついに着工した「JASM第2工場」。熊本に注目している台湾企業に熊本市・八代市が直接アプローチ。

2025年第2四半期には70%を超える世界シェアを獲得した半導体製造大手のTSMC(台湾積体電路製造)。その日本法人であるJASMの第1工場(熊本県菊陽町)が2024年12月から稼働を開始しました。さらに第2工場の建設も始まり、周辺自治体の多くがこのチャンスを地域経済に活かすべく、関連企業の誘致といった新たなビジネスの獲得に力を入れています。その中から、台湾国内で説明会を実施した熊本市と八代市の事例をご紹介します。

熊本県菊陽町にあるJASM第1工場。第2工場は2027年12月操業開始予定。
熊本県菊陽町にあるJASM第1工場。第2工場は2027年12月操業開始予定。

菊陽町に隣接する熊本市は台北市でセミナーを開催。

熊本市は2025年9月10日、台湾の台北市で「熊本市企業誘致セミナーin台湾」を開催しました。昨年に続き2度目となる海外企業を対象とした誘致セミナーで、国内外の半導体関連企業の熊本への進出意欲の高まりを受けて企画されました。

熊本市役所14階展望ロビーから見た熊本城。
熊本市役所14階展望ロビーから見た熊本城。

今回は、現在熊本市の3カ所で開発が進む、初の官民連携の産業用地(工業団地)を念頭においたPRを目的として企画。25年春から造成工事が始まった産業用地は全て合わせると45ヘクタールほどの規模、いずれも北東部にあり菊陽町まで10km圏内です。

2025年9月10日に行われた「熊本市企業誘致セミナーin台湾」の様子。
2025年9月10日に行われた「熊本市企業誘致セミナーin台湾」の様子。

なるべく多くの企業に集まってもらえるよう、「国際半導体製造装置材料協会(SEMI)」が主催するアジア最大規模の半導体関連展示会「SEMICON(セミコン)台湾2025」と同タイミングで実施。少しでも確実な企業誘致につなげていきたいという狙いです。

「熊本市企業誘致セミナーin台湾」の会場となった「雅悅會舘」内。
「熊本市企業誘致セミナーin台湾」の会場となった「雅悅會舘」内。

会場は台北市南港区の中國信託金融パーク内にある「雅悅會舘」。セミコン会場の徒歩圏内に位置します。 もともと熊本市は、TSMCの進出と同時に、市長をトップとした「半導体関連産業推進本部」を設置。用地確保や人材確保、国際交流や渋滞対策に至るまで、オール市役所の体制で幅広い対応に努めています。その中の産業誘致分野を担う企業立地推進課が、セミナーの企画・運営を担いました。

台湾企業の誘致などを担当している熊本市経済観光局 企業立地推進課の職員の皆さん。
台湾企業の誘致などを担当している熊本市経済観光局 企業立地推進課の職員の皆さん。

そして、このセミナー実施業務をサポートしたのが熊本銀行ソリューション営業部です。開催まで約2ヵ月という限られた時間の中で、会場選定や通訳の手配、参加受付の窓口など事務局として奔走。また熊本市が最も懸念していた参加企業数に関しても、同じグループの福岡銀行台北駐在員事務所の力を借りながら、熊本進出に興味を持っていると思われる企業への案内、周知に注力しました。

セミナーの最後に行われた交流会の様子。
セミナーの最後に行われた交流会の様子。

同営業部のグローバルグループに所属する土田さんは、「翻訳アプリを駆使して会場側と打ち合わせを重ねたり、現地企業の状況など福銀の台北事務所に協力を仰いだりして、なんとか前回より多くの企業に集まってもらえるよう働きかけを続けました」と振り返ります。

熊本銀行ソリューション営業部の土田さん。
熊本銀行ソリューション営業部の土田さん。

結果、前回を11社も上回る63社80名の方が来場。企業立地推進課の岡島課長は、「非常に多くの方に参加いただき、また皆さん熱心にメモを取られていたり、後日直接我々の方へ個別相談をいただいたり、関心の高さがうかがえました」と手応えを感じてくれているようです。

「今後も年1回のペースで台湾セミナーを続けられれば」と話す岡島課長。
「今後も年1回のペースで台湾セミナーを続けられれば」と話す岡島課長。

セミナーでは、生活環境も含めた熊本市というまちの概要について、また企業誘致にまつわる取り組みについて岡島課長が説明。そのほか共催者である熊本県からは、県側が設けている支援策に関する紹介、さらに熊本銀行からは、外国企業が熊本で事業展開する際に必要となる口座開設や登記といった諸手続をお手伝いするビジネスサポートについてのプレゼンを行いました。

セミナーで登壇し、ビジネスサポートの紹介をする熊本銀行の角田調査役。
セミナーで登壇し、ビジネスサポートの紹介をする熊本銀行の角田調査役。

「今回熊本銀行さんに、事務局としての仕事や現地調整はもちろん、ビジネスサポートの紹介までしていただけたことは、非常に私たちも助かりました。企業誘致において、特に製造業などは規模が大きいので、現地情報や行政の補助金以外の部分も重要。ですので、我々自治体が金融機関さんとそれぞれの持ち分を連携させて幅広い支援策をご紹介できたことで、皆さん安心、納得していただけたと思っています」(岡島課長)

「熊本市における半導体関連企業の集積を目指す」と岡島課長。
「熊本市における半導体関連企業の集積を目指す」と岡島課長。

セミナー翌日には、台湾にある半導体関連企業を訪問。訪問先は、福岡銀行の台北事務所が現地のネットワークを生かし、熊本への投資意欲の高い会社として事前に選定した3社です。各社の日本進出に対する考え、支援に関するニーズなどについて直接ご意見をうかがうことができました。

セミナー翌日に訪問した企業、同一工業股份有限公司の皆さんと。
セミナー翌日に訪問した企業、同一工業股份有限公司の皆さんと。

今回ターゲットとしている半導体事業に関わる関連会社には、直接的な部品や材料のサプライヤーだけにとどまらず幅広い企業が含まれます。セミナーや企業訪問においても、製造現場のクリーンルーム内で着用する高性能防塵服を扱う会社や、不動産業者、さらに台湾料理店経営者など、さまざまな業種の方が熊本進出に関連する話を興味深く聞いてくれました。

訪問企業の一つ「正洸股份有限公司」はクリーンルームウェアの製造会社。
訪問企業の一つ「正洸股份有限公司」はクリーンルームウェアの製造会社。

「実際、裾野は結構広がりつつあり、熊本の状況などを知りたいと関心を持っている企業は多いです。セミナー後も『こういう規模のこんな事業で熊本進出を考えているが、場所はあるのか、人はいるのか、補助制度はどうなっているのか』など、具体的な問い合わせも入ってきています」と岡島課長。この2年で構築してきた台湾企業とのつながりを今後も維持・拡大できるよう、企業への継続的アプローチや、半導体関連の展示会参加などによるプロモーションを続けていきたいと考えているそうです。

 

八代港のセールスをTSMC本拠地の新竹市で開催した八代市。

台北から新幹線で35分の距離にあり、「台湾のシリコンバレー」とも呼ばれる台湾新竹(シンチク)市。2025年9月16日八代市は、新竹市内にあるアンバサダーホテル新竹で「八代港セミナーin 台湾」を開催しました。2024年に両市は友好交流協定を締結しており、その1周年記念行事の意味合いも一部兼ねています。

新竹市のシンボル、新竹駅は1913年に完成した洋風建築。台湾最古の駅舎。
新竹市のシンボル、新竹駅は1913年に完成した洋風建築。台湾最古の駅舎。

八代市からは小野市長をはじめ、港湾・クルーズ振興課、商工政策課、観光振興課、フードバレー推進課、国際課から14名が現地に入り、熊本市同様、熊本銀行と福岡銀行台北事務所からも11人がサポートに当たりました。

台湾セミナーを担当した八代市港湾・クルーズ・振興課の職員と熊本銀行行員。
台湾セミナーを担当した八代市港湾・クルーズ・振興課の職員と熊本銀行行員。

今回のセミナーは、タイトルのとおり八代港を知ってもらい、使ってもらうためのプロモーションと国内企業との取引増加を目的として開催。日本から運輸業や倉庫業、金融コンサル業などの様々な企業から29名の参加がありました。 八代港は1999年に韓国・釜山港間に県内初のコンテナ国際航路が就航し、2017年には大型ガントリークレーンやコンテナターミナルが完成。2020年には「くまモンポート八代」という公園を兼ねたクルーズ船専用港も誕生し、国際港として進化を続けています。

クルーズ船で訪日する観光客にも大人気の「くまモンポート八代」(写真提供:八代市港湾クルーズ・振興課)。
クルーズ船で訪日する観光客にも大人気の「くまモンポート八代」(写真提供:八代市港湾クルーズ・振興課)。

現在、台湾や韓国、中国からの大型クルーズ船が月に数回入港するほか、2021年には八代港と3つの港(基隆、台中、高雄)を結ぶ県内唯一の台湾コンテナ航路も就航。輸入の場合は台湾出航後4日で荷揚げ可能で、輸出も8日後には台湾に到着します。

3万トン級のコンテナ船に対応できるガントリークレーンを備えた八代港(写真提供:八代市港湾・クルーズ・振興課)。
3万トン級のコンテナ船に対応できるガントリークレーンを備えた八代港(写真提供:八代市港湾・クルーズ・振興課)。

八代港のもう一つの特徴として、高圧ガスや危険物など取り扱いが難しい品目にも対応しているという点があります。 セミナーでは、港湾・クルーズ・振興課の髙田課長が「水深があり大型コンテナ船の停泊も可能な八代港は、半導体製造に関連した各種資材、高圧ガスや化学品の荷揚げも可能。さらに八代は新幹線や高速道路など陸上アクセスにも優れていて物流拠点としても最適なので、ぜひ多くの半導体関連企業に八代港を使っていただきたい」と、アピールしました。

八代市港湾・クルーズ振興課の髙田課長。
八代市港湾・クルーズ振興課の髙田課長。

そんな八代港をすでに利用している会社が、化学品総合物流のNRS株式会社です。半導体関連の温度管理化学品や高圧ガスなどの輸出入・保管を行う同社には、「八代港を利用した物流網の構築について」と題してセミナーで発表していただきました。JASM工場がある菊陽町まで車で1時間という地理的なメリットはもちろん、県内唯一の危険物を取り扱える港という点も説明。参加した荷主企業や船社・港湾事業者が興味深く耳を傾けていました。

NRS株式会社のプレゼンテーションの様子。
NRS株式会社のプレゼンテーションの様子。

そのほか、台湾航路を運航する愛媛オーシャン・ラインの代理店である郵船ロジスティクス台湾によるプレゼンテーションや八代市の投資環境の紹介、八代の観光・物産をPRする特設ブースを囲んでの交流会も行われました。

「八代港セミナーin 台湾」での会場内の様子。左下は、握手を交わす八代市長(左)と新竹市市長代理(右)。
「八代港セミナーin 台湾」での会場内の様子。左下は、握手を交わす八代市長(左)と新竹市市長代理(右)。

会の運営サポートを担当した熊本銀行ソリューション営業部の大畑さんは、「前日に急遽、新竹市の市長代理の方の挨拶が追加になるといった想定外もありましたが、無事対応できました。情報交換や交流がセミナーの要ですので、通訳の人数を当初の5人から8人に増やしたことも良かったです。お互い初めての取り組みでしたが、八代市さんの期待に応えることができたのではないかと思います」と振り返ります。

熊本銀行ソリューション営業部の大畑さん。
熊本銀行ソリューション営業部の大畑さん。

熊本銀行をはじめ、ふくおかフィナンシャルグループとしても、これから半導体産業やインバウンドに関連したさまざまな案件のお手伝いをさせていただく機会がますます増えると予想しています。今後もグループの多彩なネットワークを活かしたサービスや商品をブラッシュアップしながら、県境や国境をこえたサポートをさらに拡大してまいります。