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STORY 08 | 地域とコト

宗像市と日の里団地の活性化で新たな賑わい
を創り出す再生プロジェクトストーリー。

50年目の巨大団地再生に「日の里モデル」で挑んだ宗像市と連携企業の想い。

福岡市と北九州市の中間に位置し、最近では世界遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」のあるまちとしても知られる宗像市。2大都市のベッドタウンとして発展していた1971年、九州最大級の「日の里団地」が開発されました。ピーク時には1.6万人が暮らしたというマンモス団地ですが、築50年を経て老朽化や空き家の増加という、全国共通の課題に直面しています。

分譲・賃貸合わせて70もの住居棟が建てられた日の里団地の過去と現在。
分譲・賃貸合わせて70もの住居棟が建てられた日の里団地の過去と現在。
分譲・賃貸合わせて70もの住居棟が建てられた
日の里団地の過去と現在。

ご自身も宗像市で生まれ育った伊豆美沙子市長は、この巨大団地の再生プロジェクトを、未来の宗像市を占う意義深い取り組みと捉えています。重要なのはこれから始まる”次の50年”を見据えた再生プラン「宗像・日の里モデル」を実現できるかどうか。そこで地区の人たちと「住み続けたいと思えるまち」について意見交換を重ね、新しい日の里のイメージを固めた上で、再生事業をスタートさせました。2020年3月、市は住宅メーカーやインフラ会社など12社による共同企業体と「日の里地区まちづくりに関する連携協定」を締結。宗像流の持続可能なまちづくりが動き出しました。

「子どもの頃見ていた日の里団地は、大都会というイメージでした」と伊豆市長
「子どもの頃見ていた日の里団地は、大都会というイメージでした」と伊豆市長

「小中学校の総合学習を利用するなど、性別年代を超えたさまざまな意見や案を聞いていく中で印象に残ったのが、垣根のない森の家、という発想でした。宗像の宝でもある海を育む存在の”森”に着目し、また地域住民の交流を促すようなまちこそ、未来に続く『宗像・日の里モデル』にふさわしいと確信しました」(市長)。

「子どもたちからも『住みたいまち』について活発に意見が出てきました」と市長
「子どもたちからも『住みたいまち』について活発に意見が出てきました」と市長

そうして生まれた宗像・日の里モデルの特徴の一つが「森の中の家」。広大な敷地に戸建て住宅をつくる計画ですが、従来の新興住宅地のような画一的な配置にせず、緑地を多く設けた上で木立の間に家々を点在させ、敢えて境界を曖昧にしようというもの。「緑地がみんなの共有の庭となり、交流を自然と促すのでは」と市長は期待を寄せています

老朽化した9棟を解体して生まれた広大な敷地
老朽化した9棟を解体して生まれた広大な敷地
この敷地に、森の中に点在する家々をイメージした戸建てが建つ
この敷地に、森の中に点在する家々をイメージした戸建てが建つ

さらに日の里モデルのもう1つの特徴が、連携企業(西部ガス株式会社、東邦レオ株式会社)が運営するコミュニティ施設「ひのさと48」です。もともと団地の48号棟だった建物を再利用し、生活に役立つテナントを誘致し交流スペースの役割を持たせました。

5階建ての48号棟を一部改修して2021年5月に誕生した「ひのさと48」
									ひのさと48に入るコミュニティカフェ「みどりtoゆかり」
									自分のアイデアを形にできるものづくり工房「じゃじゃうま工房」
									宗像の食の発信場所ともなる、住民のための交流スペース「箱とKITCHEN」
(左上から時計回りに)
5階建ての48号棟を一部改修して2021年5月に誕生した「ひのさと48」
ひのさと48に入るコミュニティカフェ「みどりtoゆかり」
自分のアイデアを形にできるものづくり工房「じゃじゃうま工房」
宗像の食の発信場所ともなる、住民のための交流スペース「箱とKITCHEN」

ひのさと48で仕事をする西部ガス株式会社の牛島さんは「なぜガス会社が団地再生プロジェクトに?と思われがちですが、地域の課題解決に携わることで、これから日本各地で起こる同様の問題に一企業として何ができるのかヒントを得られると思っています」と言います。とはいえ「手を付ける前の団地を見た時は正直、ここで何ができるのか想像も付かず、大丈夫かなと不安でした」。けれど、他社や地域の方と協働する中で課題を解決する方法をゼロから生み出す面白さを知り、今は変化を楽しんでいると笑顔で話します。

日の里団地の再生プロジェクトに携わる西部ガス株式会社の牛島玄さん
日の里団地の再生プロジェクトに携わる西部ガス株式会社の牛島玄さん

西部ガスと同じく宗像市と連携協定を結んでいる東邦レオ株式会社は、建築・緑化資材メーカーです。屋上緑化やマンションの植栽管理を通じて、全国のタウンマネジメント事業にも携わるようになりました。同社の馬込さんは4年前から社会課題の一つでもある団地再生に興味を覚え、日の里団地のプロジェクトに参加。今はひのさと48の一室でクラフトビールをつくっています。

クラフトビール「さとのBEER」をつくる東邦レオ株式会社の馬込賢太郎さん
クラフトビール「さとのBEER」をつくる東邦レオ株式会社の馬込賢太郎さん
地元産の素材を利用し、団地で製造される「さとのBEER」
地元産の素材を利用し、団地で製造される「さとのBEER」

「海外ではクラフトビールを使った地域活性がさかんで、ひのさと48で交流を…と考えた時、すぐに地ビールが浮かんだんです」(馬込さん)。しかも宗像市はビール大麦の一大産地。それならばとすぐに準備に取り掛かり、2021年5月、ひのさと48のグランドオープンと同時に日本初の団地ビール醸造所「ひのさとブリュワリー」が誕生。直後から複数のメディアに取り上げられ「最初からこんなに売れるとは嬉しい誤算」と、馬込さんは日々寝る間も惜しんでビールづくりに没頭しているのでした。

クラフトビール「さとのBEER」をつくる団地内醸造所「ひのさとブリュワリー」。レシピ開発や仕込みは馬込さんが担当
クラフトビール「さとのBEER」をつくる団地内醸造所「ひのさとブリュワリー」。レシピ開発や仕込みは馬込さんが担当
ビールは店頭販売のほか、隣接のコミュニティカフェ「みどりtoゆかり」で生ビールを提供
ビールは店頭販売のほか、隣接のコミュニティカフェ「みどりtoゆかり」で生ビールを提供

主人公は未来の住人たち!地域の課題解決プロジェクト「さとづくり48」

ひのさと48やひのさとブリュワリーがメディアから注目されたもう一つの理由が、「さとづくり48」プロジェクトです。古いものを新しく変えるだけの「まちづくり」ではなく、これまで日の里が育んできた「気持ちのバトン」を次の世代へ継承し続けるため、「さとづくり」という観点で団地再生を進めようというもの。地域の人たちを主役に、宗像・日の里モデルの連携企業も一緒に取り組んでいます。

日の里で大切にされてきたモノやコトを体験し発信する「さとづくり48」webサイト
日の里で大切にされてきたモノやコトを体験し発信する「さとづくり48」webサイト

プロジェクトで行った企画の一つが、産学官が連携した「大人本気会議」。小中学校の子どもたちと一緒に、生まれ変わった日の里団地でやってみたいことを話し合い、出てきた案を大人たちが本気で実現させようというものです。

コロナ禍の中、小中学校とリモートで意見交換を行った「大人本気会議」
コロナ禍の中、小中学校とリモートで意見交換を行った「大人本気会議」

その結果「人が集まるひのさと48の外壁にクライミングウォールを作りたい」という中学生の大胆なアイデアが採用され、早速シナリオが練られました。安全なウォールクライミングの設備費用200万円をどう集めるか?そこで白羽の矢が立ったのが、FFGのiBankマーケティングが運営するクラウドファンディングサイト「エンニチFUNDING」でした。

ひのさと48の外壁にクライミング器具を設置したイメージ
ひのさと48の外壁にクライミング器具を設置したイメージ
ひのさと48の外壁にクライミング器具を設置したイメージ

「さとのビールを飲んで、日の里団地の壁にクライミングウォールをつくろう!」と銘打ち、クラフトビール1杯付きの3,000円から、完成施設のスポンサーロゴ権が付いた30万円まで幅広い募金商品が設定されました。結果、なんと1ヵ月足らずで目標額を達成!最終的に目標をはるかに上回る275万円が集まりました。これからいよいよ、他に類を見ない外壁工事が始まります。珍しいクライミング体験を見ながらクラフトビール…、住民ならずとも完成が楽しみです。

複数のテレビ番組でも取り上げられ、一気に支援数が伸びたエンニチの日の里プロジェクトページ
複数のテレビ番組でも取り上げられ、一気に支援数が伸びたエンニチの日の里プロジェクトページ

FFGと福岡銀行はもともと、持続可能な新たなまちづくりを目指す宗像市と地域活性化に向けた連携と協力に関する協定を結んでいましたが、今回、西部ガス株式会社、東邦レオ株式会社を含めた官民協業にも、資金調達ツールの提供&サポートという役割を果たすことができました。

これからさらに多くの事業や課題が発生するかもしれませんが、FFGもつなぎ役として、プラットフォーム提供やプロモーション支援による「さとづくり48」の推進をはじめ、地域産品の販路拡大やエリアマネジメント支援による地方創生の取り組みを進めてまいります。